京都・貴船神社 本宮|表参道 石畳・水脈整備(第17期)
京都・貴船神社本宮へと続く表参道。多くの人が行き交うこの場所では、長年の踏圧により地面が締まり、雨水はしみ込まず、土の呼吸が弱まっていました。けれど掘ってみると、土の中には空気の通り道や根の広がりが残り、まだ環境は生きていました。今回の工事は、すべてを壊すのではなく、その“生きている状態”を活かしながら整えること。石畳の下に空気と水が巡る仕組みをつくり、大地が再び呼吸できるように手当てしていきます。人が歩く場所を、自然の循環へとやさしく戻す。その小さな積み重ねの記録です。
京都・貴船神社にて石畳および水脈整備工事を行いました。
貴船神社では2022年より、大地の再生の考え方をもとにした環境改善の施工が続いています。
樹木の樹勢回復から始まり、参道や階段の改修へと広がってきました。
今回手を入れたのは、多くの人が行き交う平場と階段まわり。日々の営みの中で、少しずつ負担が積み重なっていた場所です。
踏み固められた大地は、呼吸を失う
雨が降ると水がたまる。歩くとぬかるむ。
その原因は、表面にありました。
瓦チップが長い年月をかけて踏まれ、粉状になり、さらに押し固められることで
- 水がしみ込まない
- 空気が入らない
- 地面が硬く閉じる
そんな状態が生まれていました。
これは単なる“使いづらさ”ではなく大地の呼吸が弱っているサインです。
掘ってみると、そこには別の景色があった
今回の工事で、実際に地面を掘削してみると
そこには、想像とは違う状態がありました。
・土の中には空気の通り道が残っていた
・点穴に向かって根が伸びていた
つまり「中の環境は、まだ生きていた」
これまでの施工が、確かに機能していた証です。
ただ一方で
表面は、踏圧によって閉じていた
この「中は生きているが、上が詰まっている」状態が今回の工事の出発点になりました。
壊すのではなく、活かしながら整える
すべてを撤去して作り直すこともできます。
けれど今回は
中の良い状態を残しながら、表層を更新する
という方法を選びました。
路盤を石畳へと切り替えながらも、その下では空気と水が巡る状態を保つ。
これは「次の段階へ整える」という考え方です。
水は、流れる場所を求めている
水がたまる場所には必ず理由があります。
今回の施工では
を行い、
流れる+しみ込む
両方の働きを持たせました。
水は、止めるものではなく、本来、巡るもの。
その流れを妨げないように、そっと道を整えていきます。
掘ったものを、もう一度活かす
掘削によって出てきた材料。
それらは「廃材」ではなく、この土地の一部です。
それらに炭とくん炭を混ぜ、空気が通る状態へと組み替え石畳の下地として再利用しています。
自然の中にあるものをまた自然の中へ還す。
それは自然を消費しない施工でもあります。
呼吸する石畳
今回の石畳は、ただ固めるものではありません。
石と石の間に隙間を残し
そんな状態をつくっています。
下地には
などを織り交ぜ、土の中が生き続ける構造をつくりました。
これは「呼吸する石畳」です。
階段もまた、大地の一部
階段部分も、
- 既存のモルタルを撤去
- 石を一度外し
- 中の状態を確認しながら再構成
しています。
内部には点穴を設け、踏まれる力が土中へと伝わるように組み立てました。
また、ケヤキまわりの水脈についても、詰まりを取り除き、再度整えています。
人もまた、この循環の中にいる
歩きやすいこと。
安全であること。
美しいこと。
それももちろん大切です。
けれど同時に
・土が呼吸できること
・水が巡ること
・生き物が暮らせること
それらも守りたい。
自然に無理をさせない場所は、人にとっても、やさしい場所になります。
おわりに
この工事は
「きれいにする工事」ではありません。
大地が、自分で呼吸できる状態を取り戻すための手当てです。
一つひとつの点穴。
一本一本の水脈。
その積み重ねが、この場所のこれからの時間をつくっていきます。
この場所はこれからも変化していきます。
雨のたびに、季節ごとに、少しずつ。
ぜひ、参拝の際には足元にも目を向けてみてください。
そこにも、小さな変化と、
大地の呼吸が息づいています。