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施工事例

庭屋いぶき

京都・貴船神社 奥宮| 雨庭・水脈整備工事(第19期) 

雨が降ると、参道のあちこちに水たまりができる。境内の土が、どこか息苦しそうに見える。その足元では、目には見えない「土の呼吸」が少しずつ滞っていることがあります。今回、貴船神社本宮では、権地前の雨庭づくり、本殿まわりの雨落ち水脈、参道外周の通気浸透、そして神門前の排水改善までを一続きの工事として実施しました。私たちが行ったのは、雨水をただ流し去るための工事ではありません。降った雨を大地にゆっくりと巡らせ、水と空気の流れを取り戻していく環境再生の取り組みです。参道の足元で何が起きていたのか。そして、どのように整えていったのか。工事の様子とともにご紹介します。  (施工期間:2026年6月23日〜26日/第19期工事)

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京都・貴船神社本宮参道にて、第19期となる環境整備工事を行いました。今回の工事の柱は、大きく四つ。権地前の雨庭整備、本殿前の雨落ち水脈、参道外周の水脈づくり、そして神門前の排水処置です。いずれにも共通しているのは、コンクリートやモルタルで「固めて流す」のではなく、炭やくん炭、木枝といった自然素材を使って、土の中に水と空気の通り道をつくっていくという考え方です。降った雨がその場でゆっくり地中へしみ込み、地下でつながり合っていく。そんな「呼吸する境内」を目指しました。 

まず取りかかったのは、権地前の雨庭整備です。地表を覆っていたビリ砂利を除去して掘り進めると、砂利層の下から雨水枡が姿を現しました。長年、雨水の逃げ場がふさがれていた場所です。 

そこで、地表から二十センチほどまでを浸透層として掘り下げ、水脈には炭・くん炭・藁・木枝を充填し、縦方向に空気と水を通す浸透杭を打ち込みました。掘った水脈は雨水枡へとつなげ、地中を流れてきた水がきちんと抜けていく道筋を確保。仕上げには路盤に炭・くん炭・瓦チップを撒き、その上に砕石を敷きました。 

雨水枡そのものにもひと手間を加えています。枡の底をあえて割り、雨水が枡の底からも地中へしみ込むように加工。枡のまわりには自然石を並べ、蓋の上には瓦を配することで、見た目を整えながら中の状態をいつでも確認できるようにしました。こうして、ただ水を受け止めるだけだった場所が、雨を地中へ巡らせる「呼吸する雨庭」へと生まれ変わりました。 

続いて、本殿まわりの雨落ち水脈です。屋根から落ちた雨がそのまま地表を叩き、行き場を失っていた縦樋の下を、八十センチほど掘削。炭・くん炭・藁を敷き、焼き杭を打ち、グリ石を充填して、雨水枡へとつながる通水路をつくりました。 

本殿前の雨落ちを掘り進めると、地表から三十センチのところで、かつての踏み石が出てきました。長い年月のあいだに土に埋もれていた石です。舟形石側から建地側へとつなげる形で溝を掘り、炭・くん炭・藁を敷いて栗石や割れ瓦を充填。縦樋の下には既存の自然石を戻し、景観になじませながら仕上げました。 

さらに、延石のキワには表層水脈を入れて水の停滞を防ぎ、延石の一部には切れ目を加えて、雨水が自然と水脈へ流れ込むように工夫しています。建物の足元に、雨をやさしく受け流す道筋が通りました。 

参道の外周や植栽帯のまわりにも、ぐるりと水脈をめぐらせました。溝を掘り、炭・くん炭を撒き、竹・木枝・落ち葉を充填。奥宮西側では、植栽帯の周囲や水切りの表層水脈を整え、日吉社の下では地中の水が湧き出しているのを確認し、湧き出し口を焼き杭と自然石で丁寧に保護しました。 

参道は多くの参拝客が歩く場所です。せっかく通した水脈も、踏まれ続けてつぶれてしまっては意味がありません。そこで、脈の上には割れ瓦を差し込んで補強し、瓦チップに炭・くん炭・バークを混ぜて撒くことで、人に踏まれても隙間が保たれるように工夫しました。歩きやすさと、大地の呼吸。その両立を目指した外周整備です。 

参道の入り口、神門の前では、U字溝に瓦チップが溜まり、水の流れが滞っていました。溜まったチップを取り除き、これ以上の流入を防ぐために溝を掘り直して、神門脇の雨水枡へとつなげます。溝には炭・くん炭・藁を敷いてコルゲート管を通し、太鼓材を焼き杭で固定。管のまわりには木枝や栗石・砕石を充填して仕上げました。 

もうひとつ手を入れたのが、水の「流れ方」そのものです。神門表側の雨水はこれまで直線的に流れていましたが、石の位置を組み替えて流線型の道筋に。塩ビ管を外して流れを確保し、溝を流れるような形に掘り直すことで、水がよどまず、なめらかに抜けていくようになりました。 

神社の参道は、多くの人が祈りとともに歩く、かけがえのない場所です。しかしその足元では、雨水の流れや土の呼吸が、少しずつ失われていることがあります。今回の工事では、雨庭や水脈を整え、神門前の滞りをほどき、これまでの整備箇所を見守り直すことで、木々や土壌が本来の力を発揮できる環境を取り戻していきました。 

目には見えにくい変化ですが、こうした小さな積み重ねが、未来の森や参道の景観を守ることにつながっていきます。庭屋いぶきは、これからも自然の仕組みを活かしながら、人と自然が共に心地よく過ごせる場づくりに取り組んでまいります。 

  • 現場:京都・貴船神社 本宮参道 
  • 工期:2026年6月23日〜26日(第19期工事) 
  • 施工内容:権地前雨庭整備/本殿前雨落ち水脈/外周水脈・表層水脈/神門前排水処置/本宮メンテナンス/年間メンテナンス計画のご提案 
  • 現場班長:増茂 匠(合同会社増茂造園設計舎) 
  • 施工:出雲路 芳信(合同会社EKAM)/渕田 貴寛(Warm・草木循環Labo)/橋口 陽平(庭のジプシー)/牧 篤生/中村 洋史(Vedic Life)/元古 隆博/前島 航平/合田 真理/池田 紗綾(Traveling Healer)/金平 知代子(綾部つむぎ) 
  • 元請:株式会社OSOTO 
  • 現場監督:佐藤 俊 
  • 記録:渡部 由佳 
  • 前回の施工事例:京都・貴船神社 本宮|表参道 石畳階段・ケヤキ樹勢回復工事(第18期) — https://niwayaibuki.jp/works/京都・貴船神社-本宮|-表参道-石畳階段・ケヤキ/ 
  • 貴船の息吹再生のあゆみ — https://osoto.co.jp/kifune/ 

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