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施工事例

庭屋いぶき

京都・貴船神社 奥宮|拝殿まわり 雨落ち・植栽帯整備工事(第20期)

19期に続き、記念すべき20期工事も奥宮の環境再生工事が実施されました。杜に囲まれた静かな境内。けれどその足元では、締め固まった敷き砂利に雨水が浸透せず、地表をただ流れていく状態が続いていました。第20期の工事では、奥宮拝殿まわりの雨落ち整備を軸に、境内全体へ通気浸透の水脈をめぐらせ、さらに土を育てるための植栽帯づくりまでを行いました。景観の印象はそのままに、空気と水の流れだけを静かに更新していく。奥宮の杜で私たちが取り組んだことを、工事の様子とともにご紹介します。

(施工期間:第20期①=2026年7月27日〜31日/第20期②=2026年8月3日〜6日)

奥宮の杜を、空気と水がめぐる場所へ

第20期の工事は、大きく二部構成で進めました。前半は、奥宮拝殿の周囲をぐるりと囲む雨落ちの整備。後半は、境内全体の通気浸透水脈と、土壌を育てる植栽帯の造成です。いずれも考え方は本宮のときと同じ。コンクリートで固めて水を流し去るのではなく、炭やくん炭、瓦や木枝といった素材を使って、土の中に空気と水の通り道をつくっていきます。奥宮という場所の静けさと景観を守りながら、その足元の「呼吸」を取り戻していく取り組みです。

拝殿の周囲は一面が締まった敷き砂利で覆われ、屋根から落ちた雨は地中へしみ込むことなく、表面を流れていました。そこで外周の雨落ち線に沿って溝を掘り、雨落ち水脈を新設。床づけの後に大点穴を開け、炭・くん炭・藁・落ち葉・グリ石を充填し、点穴どうしを溝水脈でつなげていきます。地表を流れてきた雨水を、その場で地中へ引き込む道筋をつくりました。

東側・西側には、瓦を用いた意匠も施しています。境内の景観の印象を保ったまま、排水の仕組みだけを新しく更新する。狛犬の台座まわりから拝殿正面、側面の灯籠列前、玉垣石柱側の通路まで、参拝の風景になじむように一つひとつ仕上げていきました。


今回の雨落ちで要となったのが、瓦を縦に伏せて並べる「瓦の縦伏せ」という仕上げです。雨落ち線に沿って掘った溝に瓦を縦に伏せて並べると、瓦どうしの間に空隙が生まれます。この隙間が空気と水の通り道になり、表面を流れてきた雨水をその場で地中へ引き込んでくれます。

さらに、瓦の隙間には貴船川の砂利を入れました。こうすることでビリ砂利の流入を防ぎながら、貴船らしい景観もそのまま保たれます。機能と風景を両立させる、奥宮ならではの工夫です。


後半は、奥宮の境内全体へと視野を広げた通気浸透水脈の整備です。エアスコップで根を傷めないように水脈を掘り、炭・くん炭・木枝を充填。舟形石の周囲、本殿西側の延石まわり、鈴市社や吸葛社、日吉社の周辺まで、境内のあちこちに空気と水の通り道を通していきました。

樹木の足元にも手を入れています。モミジや桂、椿、そして奥宮外周の大杉。根回りにエアスコップで表層水脈や点穴を開け、炭・くん炭・有機物を充填することで、根が伸びやすい環境を整えました。路面はビリ砂利で仕上げ、石積みのキワはウッドチップでカバー。法面では「風の草刈り」も行い、杜全体の風通しを整えています。


最後に取り組んだのが、植栽帯の造成です。掘削した溝に、炭・くん炭・丸太・竹・木枝・落ち葉など、多様な有機物を充填。川床の不要な竹なども活かしながら、その上に土を被せて「築山」として盛り上げていきます。

土をあえて高めに盛り、重さをかけることで、内部では有機物の発酵が進み、菌糸が育つ環境が生まれます。土の中に空気と水の通り道ができ、根が深く伸びていける、豊かな土壌へと育っていく。仕上げには落ち葉やウッドチップでグランドカバーし、乾燥と表土の流出を防ぎました。すぐには目に見えませんが、これから何年もかけて土そのものが育っていく、時間を味方につけた整備です。


掘削した溝に竹・木枝・落ち葉など多様な有機物を充填する

奥宮は、貴船神社の信仰の原点ともいわれる、静けさの深い場所です。その足元で、雨水の流れや土の呼吸が少しずつ滞っていました。今回の工事では、拝殿まわりの雨落ちを整え、杜全体に空気と水の道をめぐらせ、土を育てる築山をつくることで、奥宮本来の力を取り戻していきました。

目には見えにくい変化ですが、こうした積み重ねが、これからの杜と参道の景観を守ることにつながっていきます。庭屋いぶきは、これからも自然の仕組みを活かしながら、人と自然が共に心地よく過ごせる場づくりに取り組んでまいります。

  • 現場:京都・貴船神社 奥宮(拝殿まわり・境内一円)
  • 工期:第20期①=2026年7月27日〜31日/第20期②=2026年8月3日〜6日
  • 施工内容:奥宮拝殿周囲の雨落ち水脈新設(瓦意匠)/境内一円の通気浸透水脈整備/植栽帯(築山)造成/本殿西側雨落ち整備
  • 元請:株式会社OSOTO

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